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2019年09月27日

FREE STYLE CUSTOM&CHOP 1992 Harley-Davidson FXSTC


取材協力=フリースタイルカスタム&チョップ phone 0569-84-3573 http://free-style-chopper.com/

『今』だからこそ、ソフテイルをベースに選んだチョッパーの秀作

 現在、中古車市場で比較的、安価で手に入れることが出来るEVOやTCのエンジンが搭載されたソフテイル・モデルたち……「当時の若者が安いベースマシンを手に入れ、そこに改造の手を施した」というルーツのことを考えると、今の時代は、こうした車両を素材にしてチョッパー・ビルドに手を染めるのが正しい方向性のような気がしますが、ここに紹介するフリースタイルカスタム&チョップによる一台は、まさに、その手本と呼べるものなのかもしれません。
 1992年式のソフテイルをベースに岩手の4Speed Paint Serviceによって施されたド派手なペイントワークが一際、目を引くこのマシンですが、しかし、目を見張るべき箇所は何も外装の色合いだけに留まるものではありません。車体各部の創り込みや全体のバランスがあってこそチョッパーの完成度は高まることを、この一台は見事に証明しているような気がします。

 その中で特筆すべき箇所がストックのフェンダーストラットを切断した後処理やタイヤとのクリアランスをギリギリまで詰めたリアフェンダー周りの造りなのですが、シートレール部は丸パイプ化した上で再製作。コブラシートもベースを可動式にすることでソフテイル最大の特徴である「リアサス付きなのにリジッドに見える」スタイルが、より際立つものとなっています。フェンダーストラットを兼ねたシッシーバーの造りや、そこに装着されたロン・フィンチテールも秀逸なチョイスです。

  チョッパーベースの王道としてナックルやパンのハイドラなどの純正リジッドや社外フレームのショベルリジッドなどを思い浮かべる方も多いでしょうが、ビルダーが手を加え、細部をキッチリと創り上げることで、このマシンのようにソフテイルベースも引けを取らないクオリティに仕上げることは可能です。ソフテイルベースのカスタムといえば、車格が大柄であることが起因となり、どことなく『間延び』した印象の車両を見かけることもありますが、このマシンはミッドUSA製の4インチオーバー・スプリンガーを装着することで全体のバランスを整えた上でストレートなラインを描くリア周りによって絶妙なフォルムのフィニッシュを見せつけるに至っています。安直にリジッド化するのではなく、敢えてソフテイルフレームを活かし、その機能を損なうことなくカスタマイジングの手を施したビルダー、山下優雄氏の姿勢はEVO以降のモデルをネガティブに捉える流れへの抗いすら感じさせ、かなり好感が持てるものです。
 普段のスタンスとして排気量の大小を問わず、様々なバイクに接しているフリースタイルカスタム&チョップ……そんな自由な意思と、そこから生まれる創意工夫の精神が極上のチョッパーを具現化する要因であることは、この一台を見る限り、どうやら間違いなさそうです。


エンジンは1992年式EVOをそのままキープ。キャブはS&SスーパーE、装着されたファンネルはフリースタイルC&Cのワンオフで刻まれた文字はビルダーの山下優雄氏曰く「神のみぞ知る」という英文。後付けのキックスターターもチョッパー的な要素を強調する。


このマシンで最も目を引くポイントといって過言ではない緻密なペイントは岩手県の4Speed Paint Worksの手によるもの。ペインター、及川哉生樹氏の技とセンスが光る。ちなみにこのペイントをオーダーする為、ビルダーの山下優雄氏はフレームと外装をバンに積み、岩手県からショップのある愛知県の知多市まで自走でクルマを走らせたとのこと。http://4speedpaint.blogspot.com/


テールランプはデッドストックのロン・フィンチ製を装着。このパーツのデザインに併せ、製作されたシッシーバーはフリースタイルC&Cによるワンオフ。


ワンオフのコブラシートはベース部分を稼働式にすることによって、あたかもリジッドのような車体のフォルムを実現。フレームの細部にまで及ぶペイントワークも圧巻だ。

キックスターターが装着されているものの、セルは排除せずこのマシンはイージースタートを実現。プライマリー周りはBDL製を選択する。

 
フロントフォークはミッドUSA製の4インチオーバーを選択。74スプリンガーと同デザインが旧車的ムードの演出に貢献する。ブレーキはPM製をチョイス。

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