チョッパージャーナル
CHOPPER&カスタムバイクの最新&ディープな
情報を配信「CHOPPER Journal WEB」

2020年05月06日

W CREST “TSURUGI”


取材協力=ダブルクレスト phone 0765-23-5811 https://www.instagram.com/w.crest/?hl=ja

日々の暮らしの中で目に映る光景、そのイメージを投影したチョッパーの秀作

 人間が手を加え、創り上げている以上、チョッパーというものには製作するビルダーやオーダーした乗り手の感性が取り入れられて然るべきものなのですが、ここに紹介する富山県、魚津市のダブルクレストによる一台は、まさにその典型と呼べるものかもしれません。
 遠く能登半島を望む富山湾を見れば4月から6月、冬は11月から3月の間で“蜃気楼”を眺めることが出来る富山県の魚津市ですが、その海を背にすると飛騨山脈の北部、立山連峰が広がる自然豊かな風光明媚な光景が広がっています。この“TSURUGI”と名付けられたチョッパーは、まさにそこにある“剱岳”をイメージソースにし、仕上げられたものなのですが、そこにはビルダー、斉藤雅己氏のナチュラルな感性が極自然なカタチで取り入れられているのは云うまでもないと思います。


 もちろん、工業製品たるチョッパーに“自然のもの”を単純に取り込んでも、デザイン的に破綻することは明白なのですが、斉藤氏が投影したのはあくまでも“イメージ”。剱岳を連なる稜線にある“三ノ窓”をモチーフとしたタンクや雪渓から流れ出る清水をイメージしたペイント表面を飾る螺鈿細工などは、繰り返しになってしまいますが、日々の暮らしの中で目に映る光景が極自然なカタチで巧みに取り入れられています。
 またペグやハンドシフトのノブなどは登山家が使うピッケルをイメージソースにしてワンオフで製作されているのですが、こうした細かな部分もマシンのコンセプトを明確に表すポイントといえそうです。


 またこの車両は前後がPM製23インチという特異なホイールサイズとなっているのですが、こうした箇所もワンオフのフレームによって絶妙なバランスに仕上げられている部分も注目に値するポイント。メインに38φほどの鋼材を使い、リア周りに1インチパイプを使用したワンオフフレームはともすれば繊細なイメージに見えるのかもしれませんが、やはり現実的な走行性を考慮し、一般的なサイズをキープしているとのことです。またフェンダーストラットと一体化されたかのように見えるテールランプの造形も見事に尽きるものとなっています。
 チョッパーというカルチャーがアメリカで生まれたことは歴然たる事実ですし、ベーシックなスタイルが基本であることは、この先も変わりませんが、より深く“オリジナリティ”を求めるのであれば、それを生み出すのは、やはり人間がそれぞれに持つ経験や感性、パーソナリティを無機質たる機械に投影すること……ビルダー、斉藤雅己という男の人生すら見えるこの一台は、その手本といえるのかもしれません。


エンジンは1998年式のEVOにモーリスマグネトーを装着。歴代のH-Dモーターの中で比較的、無機質なデザインですが、それが逆にこのマシンの随所の造形を際立たせているようにも感じます。キャブはS&SスーパーE。ワンオフのエアクリーナーのデザインも見事です。


立山連峰にある剱岳、その稜線の“三ノ窓”をモチーフにしたタンクはダブルクレストによるワンオフ。その表面を飾るペイントワークや螺鈿細工も見事に尽きるものです。シフターはピッケルをモチーフにしたハンドメイドとなっています。


ワンオフのフットコントロールもピッケルをモチーフに製作したもの。こうした箇所にビルダーのセンスと技術力が垣間見えます。プライマリーはプリモ製2インチオープンベルトとなっています。


ハンドルはダブルクレストによるワンオフを装着。ブレーキマスターはタンク内側に移設し、レバーをハンドルバーに直接ウェルドオン。ここもセンスと技術、その両立を感じさせるポイントです。


フェンダーストラットと一体化したかのように見えるテールランプはボディもレンズもダブルクレストによるワンオフ。ちなみにこのマシン、2,012年のジョインツにて本誌のアワードに選ばさせて頂いたのですが、全体のバランスやオリジナリティはもとより、こうした細かなディテールワークも評価のポイントとなっています。様々な意味で天晴な一台です。

 

 

関連記事