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2019年11月29日

Event Report:KUSTOMFEST 2019 in Indonesia“Part2”


Special Thanks to KUSTOMFEST in Indonesia https://kustomfest.com/

インドネシアのカスタムフェストを飾ったアワード・カスタムたち

 去る10月5~6日の2日間、インドネシアの古都である“ジョグジャカルタ”のエキスポセンターで開催されたKUSTOMFEST2019。今回は、ここでアワードを獲得したカスタムたちを紹介させて頂きますが、今年の同ショーで強く感じさせられたのが、現地のカスタムの著しいレベルアップかもしれません。
 その中で今回、ベスト・オブ・ショーを獲得したのが、上の写真にあるKedux Garageのハーレーなのですが、現地での400万円弱というスポーツスターの新車価格を考えると凄まじい仕様のもの。輸入欧米車の関税が200%、その上、消費税も徴収されるインドネシアでは基本、(我々、日本人が言うところの)『外車』は、驚く程に高額な価格設定なのですが、そうしたマシンをベースに、技巧を凝らしたこの一台は、インドネシアの人々にとってまさに『夢のバイク』なのかもしれません。
 ちなみに首都のジャカルタでの最低賃金は日本円で月に2万5000円と云われているのですが、そうしたことを単純に鑑みても、我々の感覚に置き換えるとこの一台はロールス・ロイスやランボルギーニ、果てはブラフシューペリアをイジり倒したようなもの。無論、純粋にカスタムとして見ても車体を飾る鋳物の装飾やアルミのシートメタルの技術は圧巻です。


『金属の質感を活かす』手法のカスタムとえいば、今回のカスタムフェストで招かれたチャボエンジニアリングの木村信也氏の真骨頂といえるのですが、インドネシアのカスタムは、どちらかというとアメリカより、我が国、日本の影響が強いのかもしれません。
 メインFFAクラスでアワードを獲得したGEGE’s GarageによるNortonコマンドベースの一台も、まさにそんな流れを感じさせるのですが、この車両は前後にペリメタータイプのブレーキディスクを採用。ちなみにこのパーツは、今や東南アジア各国で絶大な人気を誇るチェリーズカンパニーの手によるもの。これも『日本のプロダクツ』や『手法』が、ある意味、憧れの対象となっていることを象徴していると言えるのではないでしょうか?


 そのチェリーズがピックとして選んだAMS GarageというショップによるCB400ベースのカフェレーサーは同じくアジアで人気を誇るカスタムワークス・ゾンの車両の影響が見え隠れします。ちなみにAMS Garageは下にあるドラッグスリックを履いたCB650ベースのマシンでゲストとして招かれたチーターカスタムサイクルズのピックを獲得。この一台は来る12月1日にパシフィコ横浜で開催されるYOKOHAMA HCS2019への参加が決定しております。また同店はカワサキER6をベースにした車両でもベスト・カフェレーサーを獲得。エントリーした3台がすべてトロフィーをゲットするという快挙を達成しています。

 以前のインドネシアのカスタムといえば、派手な彫金を施し、ギラギラのペイントで飾られた『足し算』的なカスタムが多かったのですが、今年の傾向としては、それが『引き算』的な方向へとシフトが変わったように思われます。
 ちなみに2017年からインドネシアの政府がバックアップし、現地から選抜されたビルダーがYOKOHAMA HCSへエントリーする『Inndonesiann Attack』がスタートしたのですが、それ以降から同国のカスタムのレベルが飛躍的に向上したように感じられます。それは、あえていえば2007年の米国、スタージスで開催された『AMD World Championship』に日本のビルダーたちが多くエントリーし、その後に我が国のカスタムのレベルが飛躍的に向上した過去と似ているような気がします。今の時代、インターネットであらゆる情報が手に入りますが、やはり本当に強い影響を与えるのは、生身の体で感じた肌感覚と実際の網膜に焼き付いた衝撃です。この流れは、それを如実に象徴するような気がします。

 そうした流れの中、今回のカスタムフェストでカスタムワークス・ゾンとムーンアイズからダブルでピックを受けたBONI PRIYUNDATIONによる一台は『引き算系』のカスタムを象徴するように思います。
 このマシンはホンダRevoというスーパーカブとスポーツバイクを足して2で割ったような、いわゆる東南アジアらしいモデルがベースなのですが、ガラリと外装を変えたその姿はレトロのようであり、モダンさも感じさせるもの。今の日本のシーンの中に置き換えても、このセンスはかなり秀逸です。

 今回はカスタムフェストにてアワードを獲得したバイクを中心に記事を展開させて頂きましたが、個人的につくづく感じさせられるのが、時代の流れというものです。そして、そこに『成長』というキーワードがあったからこそ、日本のシーンの今があります。
 今年のHCS2019にも『Inndonesiann Attack』として現地から多くのビルダーが来日します。そして、この先どころか、既に現時点で彼らは日本のカスタムと切磋琢磨する関係にあると思います。あえて断言すれば今、小排気量車のカスタムでは世界最高峰のレベルにあるのがインドネシアです。この流れが近い将来、ハーレーを始めとする大排気量車にも到来すると思います。日本だけに目を向けると、若者のバイク離れやメカニックの不足など暗い話題になりがちですが、世界規模で視野を広げると、まだまだカスタムの世界には夢があるのかもしれません。(マコナベ)


今年のHCS2019に来日を果たす『Inndonesiann Attack』に選べれた面々とカスタムフェストを主催するRetoro Clasic CyclesのLulut Wahyudi氏。是非、会場で同国の今を感じてみてほしい。

 

 

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